第1章

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「私に恋人が出来て その人に我儘を言える様になれば それでおしまい?」 「……」 「羽山のポイントになる様な事ある?」 小さく首を傾げるとさらりと髪が肩から落ちる。 「ありますよ」 「……何?」 「自分の為です」 「どんな事が?」 納得出来ない表情で食い下がる。 先輩がこんな風に踏み込んで来るのは珍しい。 「先輩が我儘を言うのが練習な様に その我儘を聞くのも自分の練習なんです」 「……」 「自分もいつか 家庭を持たなければいけない時が来るから 意図を汲んだり 我儘を聞いてあげたり 今のままじゃ出来る気がしないので」 「…………」 顔をしかめたまま先輩は視線を伏せた。 「先輩だって今のままじゃ 今までみたいな繰り返しで 終わるって思いません?」 「…………」 「こんな事貴方にしか頼めないし」 先輩は小さく息を吐いて肩を落とした。 頼られたら突き放せない。 それを分かった上で言葉を重ねた。 お人好しっていうか 優しすぎるんだ、先輩は。
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