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「…………」
設楽さんがお待たせしましたと言って扉を開け、降り立った目前に言葉を失う。
竹林に囲まれた敷地
石畳が続く路
足元の照明が濡れた路を照らす
その奥に見える茅葺の門
着物姿の女性が小さく頭を下げた。
ここは一見さんお断りな雰囲気満載だ。
それはそれは広い旅館で二階建ての建物とは別の方向へと案内される。
日本庭園を通り小さな庵のような建物に案内された。
8畳の部屋が2部屋、専用の温泉が付いていて、縁側からは庭が眺められる素敵な造り。
「お夕飯は如何なさいますか?」
先輩を見ると首を振る。
「ありがとうございます、大丈夫です。
あの……こちらの部屋以外は満室ですか?」
「お陰様で」
僅かに首を傾けて緩やかな笑顔を見せる女将。
「何かありましたらお呼び下さい」
と、あまりこちらに踏み込まずに下がって行った。
「元々……初見が使うつもりだったのかな」
す、と障子を開けて縁側に佇む先輩。
「そうかもしれませんね」
風に靡いて触れ合う笹の音
微かに響く水琴窟の音色
余計な音は何一つ無い。
だから、先輩が動く度に衣服の擦れる音を、自分の足音を、やけに耳が捉える
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