第1章

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「大丈夫で……す」 反射的に出た言葉が見上げた人物により途切れて行く。 目の前に羽山がいた。 「まだここに居座ります?」 「……」 「立てます?」 手を差し出された。 「先輩顔赤い。暑さにやられたんじゃない?」 私の二の腕を掴んで引き上げる。 「せめて日陰選びましょ?」 「……うん」 羽山の手から熱が伝わる。 ぶわっと蘇る昨夜の出来事。 でも、羽山の横顔は涼しげで、なんともなかったみたいだ。 やだ やだ 1人になりたかったのに……。 「羽山……ちょっ、痛い」 「すいません」 そういいながらも羽山の手の力は弱まら無かった。 順路を進み人のいない場所で トン、と壁に押しやられた。 私を見下ろす羽山が腕を掴んでいた手を離した。 その手がゆっくり上に上がってくる。 昨日したみたいに、おでこに手をあてた。 視界が半分塞がれて、羽山のスーツに視線を落とす。 「先輩」 「……何?」 「声、枯れてる」 掌がどかされ開けた視界に 羽山が薄く笑っていた。
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