第1章

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「でも、ほら先輩のお友達の……山館さんもくるって」 「香澄……も」 昼間聞いたのと同じ話か。 「木崎さん連れて来るって約束しちゃったんですよー」 「行きません。 小川も私と一緒に仕事してたなら分かるでしょ?」 「やー……そうなんですけど」 どうせ飲み会で盛り上がって安請け合いしたんでしょ? 小川が困った顔をしながら顔を傾けた。 「羽山も来るし」 「え?」 「は?」 驚いていたのは私だけじゃない。 「そんな話知らないんだけど」 羽山の声が後ろから聞こえた。 「羽山来るよね、だってあの事……」 「小川」 羽山の低い声が小川の言葉を遮った。 「……」 何だか微妙な空気が流れている。 「羽山も来るよね?」 小川が首を傾げる。 「……」 「木崎さん連れてきてね」 「え?……小川?」 なんだか話が纏まってしまったみたいで私は小川を呼び止めたけど よろしくねー、と手を振って帰って行ってしまった。 「羽山行く事になったの?」 振り向いて問いかけた。 「……ええ」 「なんで?小川に弱味でも握られてるの?」 「…………」 「そうなんだ」 「先輩」 「何?」 「先輩の弱味なら自分も握ってますけど?」 「…………」 羽山が目を細めた。
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