第1章

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いつもの通りの満員電車。 吊り革に捕まって窓の外を眺めた。 ……あ、あそこ。新しいマンション建つんだ。 どこの会社だろう。 とか、目が行ってしまうのも職業病の一種だろうか。 「…………」 市野さんに言われて思い出す。 あの時羽山は私の背中に触れていた。 それが、ちっとも嫌じゃなくて寧ろ安心していた。 自然過ぎて違和感が無かった。 それをわかった上で触れてくれたのかな……。 羽山だって人に触れるのは得意じゃないはず。 着いて来てくれた事には本当に感謝している。 それに……羽山の部屋に招いてくれた事も。 私の頭の中で想像していたより、羽山は人との距離が遠くないのかもしれない。 「………」 電車の中でひらひらした半袖のワンピースを着た女の子が目に入った。 もうすぐ夏なんだ。 季節感の無い自分のスーツ姿が電車の窓に映った。
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