第1章

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「気安く触んな」 羽山がその人の腕を掴んでぽいっと離し、私の隣に割り込む様に座った。 「何だよー、相手にされなかったくせに」 「俺が相手にされなかったのに お前らに可能性ってあるの?」 無表情のまま、そう言い放った。 「…………」 皆一瞬黙ってしまった。 「あはは、羽山言うねー」 小川が楽しそうに笑うと、皆も笑った。 それでさっきの一瞬の気まずさが無かった事になる。 小川って、凄いんだな。 羽山とは隣に座っていたけど、お互い目を合わせる事無く前を向いていた。 周りの喧騒が遠くで聞こえるような感覚。 空が急に暗くなり始めたのでそろそろ解散しようか、と片付けを慌ててしていたら大粒の雨が降り出した。 皆逃げ惑うように解散して 駅に向かおうとする人の流れの中 羽山に腕を掴まれた。 「何?」 「タクシーで帰りましょ」 公園から出て直ぐの大通りで、駅に向うタクシーに手を上げた。 あっという間にびしょびしょになって、服が肌に張り付く感じが気持ち悪い。 良く冷えたタクシーの中。 急に体温が奪われる。 「すみません、クーラー止めてもらっていいですか?」 羽山が運転手に言ってくれた。 そして、羽山が告げた行き先は私の家だった。 「ここからなら羽山の家の方が近いよ」 「いいんです」 先に帰そうとしてくれてるのかな。
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