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「気安く触んな」
羽山がその人の腕を掴んでぽいっと離し、私の隣に割り込む様に座った。
「何だよー、相手にされなかったくせに」
「俺が相手にされなかったのに
お前らに可能性ってあるの?」
無表情のまま、そう言い放った。
「…………」
皆一瞬黙ってしまった。
「あはは、羽山言うねー」
小川が楽しそうに笑うと、皆も笑った。
それでさっきの一瞬の気まずさが無かった事になる。
小川って、凄いんだな。
羽山とは隣に座っていたけど、お互い目を合わせる事無く前を向いていた。
周りの喧騒が遠くで聞こえるような感覚。
空が急に暗くなり始めたのでそろそろ解散しようか、と片付けを慌ててしていたら大粒の雨が降り出した。
皆逃げ惑うように解散して
駅に向かおうとする人の流れの中
羽山に腕を掴まれた。
「何?」
「タクシーで帰りましょ」
公園から出て直ぐの大通りで、駅に向うタクシーに手を上げた。
あっという間にびしょびしょになって、服が肌に張り付く感じが気持ち悪い。
良く冷えたタクシーの中。
急に体温が奪われる。
「すみません、クーラー止めてもらっていいですか?」
羽山が運転手に言ってくれた。
そして、羽山が告げた行き先は私の家だった。
「ここからなら羽山の家の方が近いよ」
「いいんです」
先に帰そうとしてくれてるのかな。
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