第1章

42/44
276人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
「……え?」 「そうすれば、先輩は幸せになれると思うんです」 「……いや……え?」 困惑した様に視線を揺らしている。 「何事も練習が大事ですから」 「……羽山、さっきのレクチャーで充分だよ」 「じゃあ、今やってみて下さい」 「……え」 「ほら」 「…………」 口をきゅっと結んで固まった。 「先輩はもう我慢する事を沁みつかせてるから、ちょっとやそっとじゃ変われないんです。 多分もう10歳の頃から気を張ってきたんでしょ?」 びく、と肩を強張らせた。 揺れる瞳がテーブルへと視線を落とす。 「甘える事は 悪いことじゃないですよ」 「……」 先輩の眉間に力が込められた。 「それに、全部さらけ出したんだし今更恥ずかしい事なんてないでしょ?」 指先を軽く握ったままいると 先輩の指先がぴくっと動く。 「じゃあ、契約しましょ」 「……え?」 「先輩はそういうのちゃんとしたら逃げないから」 「……羽山の意図は?」 「意図?」 「私に我儘言わせたいとか 羽山にとって面倒以外のなんでもないっていうか」 「そうですね」 視線を伏せて先輩の爪の先に親指を押し当てた。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!