第1章

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「じゃあ、あの件羽山にも話といて。 出張費付くから」 「うん、じゃあお疲れ」 飲み会は解散した。 二次会へ向かう算段を取っている間に私はその場から去る。 方向が一緒だから、いつも通りの自然な流れで羽山と帰る途中で、いつもみたいに普通に話していた筈だった。 昼間の暑さは夜になると落ち着いて、吹く風は心地良い。 「先輩」 羽山に呼ばれた。 隣を歩いていた筈なのに振り向くと数歩後ろに立ち止まっていた。 「羽山?」 いつも通り無表情だけど何だか違う。 風に拭かれて視界に靡いた髪が入った。 「飲み過ぎた?」 私は耳に髪を掛け直して羽山を窺う。 私の目をじっと見たまま動かない。 いつも通りだったのに、今2人の間に流れる空気は違う。 変な緊張感が急に漂う。 「好きなんです、先輩の事」
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