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それ以上、俺は何も言わなかった。
この2週間、何かを察していたのか、友美さんは俺に一言も千波さんのことを聞いてきたりしなかった。
もちろん、俺からも何も話したりはしなかった。
………聞かれても、上手く説明できる自信がなかったから。
けれど2週間というクッションを置いたことで、自分から千波さんの話をするぐらいには気持ちも落ち着いたんだろうか。
友美さんもそう感じたのか、俺の顔をじっと見つめたまま不意に口を開いた。
「………陸さん。千波さんがここ辞めてから、千波さんと会ってる?」
「……………」
恐らく聞かれるだろうな、と思っていた俺は、友美さんの方を見ないまま静かに首を横に振った。
「………いえ。会ってません」
何故会わないのか、という質問を予想していたけれど。
直後、友美さんは意外なことを聞いてきた。
「もう、千波さんのこと好きじゃないの?」
驚いた俺はパッと友美さんを振り返る。
友美さんは、穏やかに微笑んで俺を見ていた。
「………………」
少し速まった鼓動を押さえ込むように、俺はそっと胸元に手を置く。
千波さんの顔を思い浮かべると、更にその鼓動は速さを増した気がした。
「…………好きです」
ポツリと呟くと。
まるで堰を切ったように、千波さんへの想いが溢れ出した。
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