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少し怒ったような足取りで歩いていく友美さんの後ろ姿を見つめながら、俺は頭から冷水をぶっかけられたような衝撃を受けていた。
『忍ぶれど色に出にけり』だと友美さんに言わしめたほど、俺の千波さんへの想いはダダ漏れだったはず。
それをあれだけ意思表示して、体の関係まで持って。
それなのに自分の気持ちが千波さんに伝わっていないなんて、思ってもみなかった。
仕事が決まれば、話したいことがあると言った時も、23日に帰ってきた時、真っ先に会いに行くと言った時も。
千波さんは『待っています』と言った。
あれは、もしかして……。
ただ一言、『好きだ』という言葉を待っていた……って、ことなんだろうか。
俺がハッキリと気持ちを口にしないことで不安の中、あの朝帰り事件があって……。
更に俺がその事を隠そうとしたことで、千波さんの心が完全に打ち砕かれたのだとしたら。
─────あんな言葉を彼女に言わせてしまったのは、全部全部、俺のせいじゃないか。
「……………っ」
友美さんは本当に、俺への発破のかけ方が上手い。
気が付くと、俺は家へ向かって駆け出していた。
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