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勢い込んで家を出たものの。
車中の時計を見た俺は愕然とした。
(………4時半。……さすがにまだ、仕事から帰ってないよな)
千波さんの勤め先の勤務時間は知らないが、普通に考えるとまだ仕事中だろう。
だからと言って、一旦火の点いた気持ちはそう簡単に鎮めることは出来ず。
俺はとりあえず車を発進させた。
(家の前……で待つのは、ストーカーっぽい…かな。勤め先まで行くのも……似たようなもんか)
当てもなく車を走らせていた俺は、ある場所まで来てハッとあることに気が付いた。
この少し先に、千波さんに紹介してもらったフラワー園がある。
元々千波さんが勤めていた土産物屋と提携していた店……そして千波さんがうちで働き始めてからは、うちにも週一で花を届けてくれている。
(そうだ……!)
俺は慌ててハンドルを切り、フラワー園の駐車場に車を乗り入れた。
あの日、迷信も知らずに摘んできてしまった彼岸花を、千波さんに手渡した時。
彼女は、男の人から花束を貰うのは初めてだと、そう言っていた。
その初めての花束が、畦で摘んできたものだということが申し訳なくて。
いつかちゃんとした花束を贈ろう、と心に決めていた。
指輪を贈ってプロポーズすることは叶わなかったけど、花束なら手ぶらよりはよっぽど格好がつく。
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