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(ああ……千波さんだ……)
俺を見て軽く目を見張った千波さんの顔を見て、俺は胸が締め付けられるような感覚を覚えた。
たった半月、顔を見なかっただけなのに。
こんなにこんなに、懐かしいなんて。
こんなに、胸が熱くなるなんて。
この場所で会えたことが嬉しくて、俺は思わず千波さんに笑いかけた。
すると千波さんは、戸惑った様子で体ごとこちらに向き直った。
「………陸……様……?」
確かめるように問われて、俺はゆっくりと千波さんに歩み寄った。
一歩一歩、砂を踏みしめる。
千波さんの目の前に立ち、じっと顔を見下ろすと。
千波さんは微かに涙ぐみ、声を震わせた。
「………り、陸様……どうしてここに……」
「実は千波さんに会いに、さっき家に行ったんです。でもまだ帰ってなくて、後で出直すつもりだったんですけど。……その前になんとなく、ここに来てみたくなって……」
「…………………」
「そしたら千波さんがいたから、びっくりしました」
何だか運命的なものを感じてしまい、俺は自分でも驚くほど饒舌になっていた。
千波さんもかなり驚いた様子で、目を大きく見張ったまま俺の顔に見入っていた。
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