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「……………は?」
「いや、だから。また俺、島に戻ってきますよって」
「………………」
ようやく俺の言葉の意味を理解したのか、千波さんは唖然としたように口をあんぐり開け、持っていたバッグをドサッと砂浜に落としてしまった。
信じられないというように、目を真ん丸にして俺の顔に見入る。
「はあああぁぁっ!? 何ですか、それっ!?」
あまりの千波さんの剣幕に、俺はビクッと体をのけ反らせた。
「………っ、知りませんよ。千波さんが勝手に誤解したんじゃないですか!」
ここまで大きな声で怒鳴られるとは思わず、さすがに理不尽に感じてそう言い返すと。
怒りなのか恥ずかしさのせいなのか、千波さんの拳がプルプルと小刻みに震え始めた。
「だ、だって、じゃあ…。証さんの会社に行くっていうのは……」
「それは…。その結婚する友人っていうのが、証の父親の秘書をしている人間で、僕も昔から親しくしてて…。
海外で親族だけの結婚式を挙げたんですけど、急遽親しい人間を集めたパーティーを会社でしようってことになったらしくて……」
俺が淡々と説明すると、千波さんの顔にみるみる驚きの色が広がっていった。
色濃く黄昏ていく景色の中でも、その顔が赤く染まってゆくのがわかる。
自分が大きな勘違いをしていたことが余程恥ずかしかったのか、俺が説明を終えてしばらくすると、千波さんは赤くなった両頬を押さえながらクルっと俺に背中を向けてしまった。
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