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小さな千波さんの背中を見つめながら、俺は初めてここで彼女を見かけた時のことを思い出していた。
あの日も、そうだった。
海に向かって仁王立ちで叫んでいて。
俺に気付いて、真っ赤になって。
千波さんはいつもそうだ。
いつも予想外の行動をして、俺をびっくりさせる。
思い込みが激しくて、しっかりしているようでどこか抜けていて。
強いようで、弱くて。
そんな彼女に、俺は惚れたんだ。
「……………ふっ」
頭を抱えて悶絶し始めた千波さんの後ろ姿が可愛くて、思わず吹き出すと。
両頬を押さえたまま、千波さんはおそるおそるという風に俺を振り返った。
羞恥のせいかうっすら涙を湛えているその顔がたまらなく可愛く思えて、俺は堪えきれずに口元を押さえてクスクスと笑ってしまった。
「…………ホンットに、千波さんには敵わないな」
笑いながら言うと、千波さんの顔に再びカッと熱が走った。
そこで俺は笑いを収め、ふっと息をつきながら体勢を元に戻した。
真っ直ぐに千波さんを見つめる。
「今日はちゃんと俺から言おうと思ってたのに、先越されちゃいましたね」
恥ずかしそうにずっと俯いていた千波さんが、その言葉を聞いて弾かれたように顔を上げた。
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