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「しかし、田島さん 昔と変わってないねぇ」
先生は、受付でチケットを購入しながら 隣の私を見て微笑んだ。
「そうですか?」
よく目立たない私なんかを覚えてたな…
「人、多いね。やっぱり注目された画家さんだけに」
私は
ゆっくりと、
一枚一枚、晃大の作品たちを閲覧する。
入り口付近は小さめの風景画が多い。
「中村くんの最近の筆のタッチは柔らかいね」
先生も同じように感じるんだ。
「この絵を、田島さんに見せたかったんだよ」
展示場の真ん中に巨大なキャンバス。
「あれは………」
私がモデルになった、
晃大の高校時代、最後の絵画____
__その芸術と十年ぶりの再会だった。
「これ、……田島さんだよね?」
先生は、絵を見上げて感嘆の声をもらす。
……裸体の私
泣いている。
「……………………」
そして
胸には 炎のように、赤い蝶が舞っている。
これは
きっと、" 晃志 "なんだ
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