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数分後─
医師がやってきて、サトシに宣告した
何を言われたのかも殆ど覚えていなかったようだ
聞き取れたのは
両親が今こちらに向かってるということ
サトシは医師の言葉を絶つように
「少し、ひとりにして下さい…」
そう言った
そして彼は、二人だけになった空間の中で
嗚咽を漏らした─
アリアは、目を覚ます気配さえない
しかし
それでも尚
サトシは限りなく話し掛け続けた
「俺達さ、すげー仲よかったよな…」
「……」
「時には口喧嘩したけどさ、いつも最後はきっかけ見つけて、仲直してきたよな…」
「……」
「…なあアリア、明日用事あるんだろ…?明後日は学校あるんだぜ…?」
「……」
「…学校のみんなが待ってるじゃねーか、またあの笑顔を見たいはずだよ…」
「……」
「…頼むよ…目を…開けてくれよ…」
「……」
「またいつもみたいに、俺を励ましてくれよ…」
「……」
「……アリア…」
打ちひしがれ、床に膝をついた
彼女は、静かに眠っている
気のせいだろうか
彼女の目から何か伝っているように見えた
視界が霞む一向でも
俺は話し掛けることを止めなかった
「アリア…俺、諦めないからな…お前を呼び続けるよ…何度でも呼び続けるよ…だからせめて……お前の声を…聞かせてくれよ…いや、目を開いてくれよ…」
その時だった
呼び掛けた声の後に
優しい声が彼に応えた
「サ…ト…シ……」
その声にサトシは応えた
「アリア…?」
間違いなくアリアの声だった
彼女は微笑んでいた
温かい笑みを顔に浮かべ、涙で頬を潤していた
サトシは、一気に涙が溢れだした
「ありがとう…ほん…とに…あり…が…とう…」
「俺の方こそ、ありがとう…」
「あと…ね…サト…シ…」
「うん…」
「私…あなたのこと…」
「うん……」
「ずっと……」
「…うん……」
「…………」
アリアは最後に
とても小さな声で囁いた
サトシには聞こえたようだった
その、儚い五つの音が…
そして彼女は
再び、静かな眠りについた─
その時だった
彼女の両親がやってきた
サトシは後ろに
両親を含め
駆けつけた医師や病院の人達がいることに
今、気づいた
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