逃亡の姫君

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真っ赤なドレスに身を包み、 物凄い勢いで少女、ユウナは桃色の高いヒールの音を立てて階段を駆け下りる。 その長く黒い髪がふわふわと跳ね、赤い瞳には焦りが映っていた。 天井のシャンデリアはゆらゆら揺れ、ユウナの白い肌を怪しげに照らしている。 「何が起こっているのだ?敵はどこから攻めてきたのだ?」 彼女は怒鳴るように声を張る。 「ユウナ様!恐らく北と西側からです!」 隣にいる金髪で翡翠の瞳の白い肌の美青年、ドラメトスが答えた。 また彼は続けて言う。 「ユウナ様、まずこの鎧を!」 ドラメトスはこの騒動の中、とっさに主君の薄くて軽い赤い鎧を持ってきていた。 彼はユウナ姫の専任騎士。 皇族には護衛役として騎士が仕えている。 ユウナはその鎧を着て、再び駆け出した。 「リグレットはどこ?リグレット!!」 ユウナはキョロキョロと辺りを見回している。 「リグレット卿はユウナ様の剣を取りに行っております!」 リグレットはユウナ姫の私兵軍団ルビーの軍団長を務める女性の将である。
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