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このままでは、あの日心に蓋をして押し込めた感情が、再び溢れ出してしまう。
でも、そんな私の必死の葛藤を、上村はいとも簡単に押し流した。
「俺にはもっと吐き出していいんですよ、先輩」
「う……っ」
上村の優しい言葉と体温に心と体の緊張が解けて、ついに本音がこぼれ落ちた。
「……寂しい。母さんを失うのが怖い。本当は一人になりたくない……」
上村は私の顔を持ち上げると、涙で濡れたまつげにそっとキスをした。
それが合図となり、私を覆っていた最後の鎧がポロポロと剥がれ落ちていく。
たとえ一夜だけでもいい、この苦しみを上村が忘れさせてくれるなら。
――気がつけば私は、上村のキスを受け入れていた。
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