嵐の前触れ

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 なんとなく煙たい人っている。 彼女たちからしたら、多分私がそれ。  うちの会社だって決して不況知らずってわけじゃないけれど、毎年四月になれば掃いて捨てるほど女の子たちが入ってくる。  どうして毎年そんなに多くの女の子を採らなきゃいけないのかっていうと、このご時世でも結婚だ、出産だなんて言って辞めていく子も案外多いわけで。  この年になってもそんな予定もなく、いつまでもここに居座っている何かと口うるさい私のことを面白く思わないんだろう。  彼女たちの陰口や、まるで私への当てつけのような職務怠慢にいちいち目くじらを立てても仕方がない。  ここで過ごした数年間が、こんなことは何でもないと流せるようになるくらい私を強くした。  私が籍を置いているのは、日本の一地方都市に本社を置く総合商社。  創業以来、エネルギー事業を中心に業績を伸ばし、今や手掛ける事業は住宅、自動車関係、外食、カルチャー部門と多岐に渡る。  巨大なビルの五階にある外食事業部が、今のところ私の居場所だ。
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