一緒に生きていこう

28/34

4452人が本棚に入れています
本棚に追加
/384ページ
「またそれ?」  上村が嬉々として取り出したのは、いつものグレープフルーツ。  上村から一つ受け取って、以前住んでたマンションよりも小さめのキッチンに立ち、食べやすいようにカットした。もはやグレープフルーツ専用と化しているガラスの器に入れ、上村に差し出す。 「いただきまーす」  こういうことになって、上村にしては珍しく浮かれてるみたいだ。緩んだ口元を戻そうともしない上村に、思い切って例の疑問をぶつけてみることにした。 「上村、あのさ」 「何、香奈も食べたいの?」  上村はフォークに刺したグレープフルーツを私の目の前に突き出した。 「何、これは」 「だって、食べたいんじゃないの?」  にやけた顔で私を見る上村に、ようやくからかわれているんだと気付く。 「もう、ふざけないでくれる?」  何これ、私は一生こうやって上村に弄られ続けなきゃいけないんだろうか。私は憮然として、横を向いた。
/384ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4452人が本棚に入れています
本棚に追加