嵐の前触れ

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 部長のお茶を手に戻ると、オフィス全体が妙にざわついている感じがした。  週明けだからだろうか? 部長が朝礼を始めようと席を立ってもおしゃべりを止めない女子社員たちのことが気になった。   「……上村(うえむら)?」 「そうです。私と一緒に三谷さんに新入社員指導してもらった上村くん、来月から本社に戻ってくるらしいんですよ」  朝礼後、書類のチェックを頼みにやってきた中山(なかやま)響子(きょうこ)が私にそう耳打ちをした。  黒髪のショートヘアに、黒目がちの大きな瞳。趣味はおしゃべり? ってくらいよくしゃべっていつも元気一杯の響子は、私より二つ下の二十六歳。  陽気な性格で飲み会大好き、おじさま受けもいい。  それなのに響子は致命的にお酒に弱い。  入社当初から飲み会のたびに酔いつぶれてしまう響子をほっとけなくて、私は毎回彼女を介抱していた。  そんなことが重なって、気づいたら私は響子に懐かれてしまっていた。
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