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「ああ、上村がねぇ。だからみんな浮ついてるのか」
営業職の上村達哉は、そのルックスと経歴が人目を引いて入社当時から目立っていた。
物腰が柔らかく人当りの良い穏やかな印象で、女子社員にかなり人気があった。
関東の有名私大を卒業して、早くから将来の幹部候補と噂されていた上村は、入社一年目にして飲料水事業部の新規事業だった天然水ブランドの立ち上げ要員として、隣県の事業所に配属された。
この異例の抜擢人事は、社内でも結構な話題になった。
玉の輿を狙う彼女たちからすれば、上村はこれ以上にない優良物件というわけだ。
「異動もまだなのに、ホントに上村が帰って来たら一体どうなるのよ。まったく、みんな何しに会社に来てんだか」
始業時間はとっくに過ぎてるのに、さっきの三人組もまだ帰ってきてない。
そもそも、毎日毎日何をそんなに話すことがあるんだろう?
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