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「そうねぇ、何か話題は?」
「あっ、じゃあ質問とかしてもいい?エリザベスも"ダイニキジッケンタイ"だよね?」
アクセントが変。可愛い。
「私はセカンドって呼んでるけどね、と言っても。あんまりまとめて話題にあがることないけど」
というか、私達はあまりお互いの話をしないのよね。まぁ、全員が個人の部屋と銘打たれた独房で暮らしてるのだし、お話する相手もこの子ぐらいしかいないしね。
「エリザベスの実験前のお話聞かせて!」
「へぇ…長くなるわよ?」
私は自分語りが大好き。長すぎて誰も聞いてくれないけど。
こんな機会久しぶりだわ。
「うん!聞きたい!」
うふふ、可愛いわねホント。
「それじゃ、まずは私が産まれた頃の話。私はとある王国の、富豪の家庭に産まれた一人娘だったの」
「フゴウって?」
あぁそうよね。
この子は"お金"という概念を知らないのよね。
「裕福な…そうね、なんて言えば良いかしら…とってもお家が大きくて、キレイな服を着て、美味しいご飯が毎日出てきて…」
ダメだわ、伝わる気がしないわね。
彼女はここから出たことが無いんじゃなかったかしら…
「うーん…分かんないよ」
そうよねぇ。
「まぁ、気にしなくて良いわよ。とにかく…毎日とっても楽しかったのよ!」
まぁ間違ってはいないわよね。
「自分で言うのも少し恥ずかしいけど、私はその辺りでは一番の美少女だったのよ」
「エリザベスキレイだもんね!」
「ふふ、ありがと。だけど、そんな美少女の幸せな毎日も、長くは続かなかったわ。あれは私が八歳の頃…」
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「…こうして私は蟷螂人間になりましたとさ。そして、今に至るのよ」
「面白かったよ!絵本みたい!」
振り返ってみたら本当に、我ながら数奇な人生ね。
幼少ながらに私は、普通の人と結婚して、普通の子供を授かって、普通に年老いて朽ちていく、と思っていたけれど、あの頃の私には想像もつかないような今に辿り着いたわね。
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