第1章

7/7
前へ
/7ページ
次へ
「そうねぇ、何か話題は?」 「あっ、じゃあ質問とかしてもいい?エリザベスも"ダイニキジッケンタイ"だよね?」 アクセントが変。可愛い。 「私はセカンドって呼んでるけどね、と言っても。あんまりまとめて話題にあがることないけど」 というか、私達はあまりお互いの話をしないのよね。まぁ、全員が個人の部屋と銘打たれた独房で暮らしてるのだし、お話する相手もこの子ぐらいしかいないしね。 「エリザベスの実験前のお話聞かせて!」 「へぇ…長くなるわよ?」 私は自分語りが大好き。長すぎて誰も聞いてくれないけど。 こんな機会久しぶりだわ。 「うん!聞きたい!」 うふふ、可愛いわねホント。 「それじゃ、まずは私が産まれた頃の話。私はとある王国の、富豪の家庭に産まれた一人娘だったの」 「フゴウって?」 あぁそうよね。 この子は"お金"という概念を知らないのよね。 「裕福な…そうね、なんて言えば良いかしら…とってもお家が大きくて、キレイな服を着て、美味しいご飯が毎日出てきて…」 ダメだわ、伝わる気がしないわね。 彼女はここから出たことが無いんじゃなかったかしら… 「うーん…分かんないよ」 そうよねぇ。 「まぁ、気にしなくて良いわよ。とにかく…毎日とっても楽しかったのよ!」 まぁ間違ってはいないわよね。 「自分で言うのも少し恥ずかしいけど、私はその辺りでは一番の美少女だったのよ」 「エリザベスキレイだもんね!」 「ふふ、ありがと。だけど、そんな美少女の幸せな毎日も、長くは続かなかったわ。あれは私が八歳の頃…」 ------------------------- 「…こうして私は蟷螂人間になりましたとさ。そして、今に至るのよ」 「面白かったよ!絵本みたい!」 振り返ってみたら本当に、我ながら数奇な人生ね。 幼少ながらに私は、普通の人と結婚して、普通の子供を授かって、普通に年老いて朽ちていく、と思っていたけれど、あの頃の私には想像もつかないような今に辿り着いたわね。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加