三人の転校生ー雨と、風と、太陽ー

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柔道や空手、合気道って言う武術は、路上でやると相手を殺しかねない危険なものだ。 だから、スポーツマンは暴力を振るうことを一般人よりも自粛させられる。 ISもスポーツの内の一つですが、さて。ここで問題です。 俺はスポーツマンだったでしょうか? 答えはーーー 「『ノー』だ」 片方の脚を後ろに引きつつ、殴りかかって来た腕を身体全体で巻き取る。 相手の首元を掴んで、投げ飛ばす。 宇宙服は頑丈だ、背中から勢い良く壁にぶつけられる程度ではものともしない。 宇宙空間でほぼ安全に作業が出来るんだ、それくらい頑丈で無ければ、宇宙飛行士を目指す輩なんて一人も出てこないさ。 『御無礼をお許しください、十也赤星。試させていただきました』 慇懃無礼なお辞儀をもらうが、片手で制する。 『何とも思ってない。俺にあしらわれた彼がどう思っているかは知らないが』 投げ飛ばされた彼は、立ち上がろうとしているが、四つん這いになったままだ。 齢十五の生意気なガキにしてやられたんだ、屈辱感は相当なものだろう。 しかし、 「齢十五のガキと侮ったのは、そっちの方だろ、おっさん」 この世は既に弱肉強食。強い者が生き、弱い者は朽ち果てて逝く。 仏教の言葉で言えば末法思想の末法に当る。 『構う必要はない。出発時刻を教えろ』 『畏まりました』 一人の敗者を除いて、会議を開いた後は、俺は鳳翼を展開してエネルギーを充填しつつアタッシュケースから棒状の固形栄養食を口に含み、片手で今回の任務のおさらいと任務達成内容を叩き込む。 戦略級の軍事衛星だ、さぞかし不気味な物がついていることだろう。
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