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味のしない栄養食を飲み込み、ハンカチで手を拭いてキーボードを叩く。
宇宙空間をパソコンの中でシミュレートし、衛星の飛行パターンを確認。宇宙ステーションに到着する時間と、そこから乗り移るまでを計算・・・完了。
衛星を破壊しなければならない場合になった時に辺りに何も無い場所を探索・・・確認。シミュレート完了。
ここまでざっと30分だ。出発時刻まであと10分。
「鳳翼。今回は辺りに気を配って欲しい。何があるかわからないしな」
何せ、初の宇宙空間だ。シミュレートって言ったって現場とここは違う。
経験していない空間が在る、新鮮だな。
『そこの人、こいつを頼む』
近くに居た黒服の男にアタッシュケースを渡す。
『こいつをこの住所まで送って欲しい』
手元にあったいくらかの金を黒服の手に握らせ、耳元で呟く。
『もしも十日以内に届かない時は、わかっているよな?』
黒服は慌てて何処かへ行った。
握らせた金で足りるだろう。さて、
『時間です。こちらへ』
俺は別の黒服が案内する通りに道を行った。
「フッ、貴様が織斑一夏・・・“世界最強のIS使い(ブリュンヒルデ)”の弟か・・・ククク」
ヒルデガルトが俺の席にやって来ていた。
「あぁ、よろしく」
「我が名はヒルデガルト。コードネームは“先走る勝利(ラウンド・ゼロ”だ。・・・ヒルダとでも呼ぶがいい」
なんかやりにくいなぁ、この人。
腕を組んでいるのだが、箒にも負けない胸を強調していて、その、目のやり場に困る。
「あ、あぁ・・・これからよろしく、ヒルダ」
「ところで我のマスターは何処だ、織斑一夏」
俺の一つ後ろの席を凝視している。
「マスターって・・・十也か。十也ならドイツに行ったみたいだけど」
「くっ!すれ違いというわけか・・・我が永劫の主人よ・・・やっと会えると思ったのに」
ヒルダはとても残念そうだ。最後だけ本音みたいだった。
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