89人が本棚に入れています
本棚に追加
タヌキの置物が脳裏に浮かび、ブルブルと首を振る。
私はトイレの個室しか利用していないのに、羽瑠のヤツ堂々とお粗末なモノ見せびらかして。
「オッス、羽瑠何狼狽えてんだよ?」
「大地、おはよ。狼狽えてねーよ」
「愛翔はどうだ?」
みんな愛翔のことが気になってるんだね。
愛翔は一人じゃない。こんなに仲間がいるんだよ。
「羽瑠、お前明日暇か?」
「明日はちょっと…」
「何だよ、用事があんのかよ。仕方ねぇな」
明日は愛翔の家に泊まると決めた。羽瑠だけに任せてはおけない。
両親が不在だから、きっと愛翔は心を開いてくれるはず。
久しぶりの三星工業、金田や吾川は喧嘩を吹っ掛けては来ないが、遠巻きから私達を威嚇している。
二年生の神風達も、私達に手を出したりしない。
嵐の前の静けさ…
私にはこの静けさが、不気味だった。
最初のコメントを投稿しよう!