11/22
前へ
/22ページ
次へ
タヌキの置物が脳裏に浮かび、ブルブルと首を振る。 私はトイレの個室しか利用していないのに、羽瑠のヤツ堂々とお粗末なモノ見せびらかして。 「オッス、羽瑠何狼狽えてんだよ?」 「大地、おはよ。狼狽えてねーよ」 「愛翔はどうだ?」 みんな愛翔のことが気になってるんだね。 愛翔は一人じゃない。こんなに仲間がいるんだよ。 「羽瑠、お前明日暇か?」 「明日はちょっと…」 「何だよ、用事があんのかよ。仕方ねぇな」 明日は愛翔の家に泊まると決めた。羽瑠だけに任せてはおけない。 両親が不在だから、きっと愛翔は心を開いてくれるはず。 久しぶりの三星工業、金田や吾川は喧嘩を吹っ掛けては来ないが、遠巻きから私達を威嚇している。 二年生の神風達も、私達に手を出したりしない。 嵐の前の静けさ… 私にはこの静けさが、不気味だった。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

89人が本棚に入れています
本棚に追加