対決

11/23
前へ
/23ページ
次へ
ほんの一瞬… 頼りない羽瑠が、男らしく見えた。 二十三時五十分、別所が私を迎えに来た。 『じゃあな、瑠羽』 『…羽瑠』 『なんだよ』 縛られ、フローリングの床に座ったまま動けない私は、白い特攻服を着た羽瑠を見上げた。 『死なないで』 『アホ』 羽瑠は笑みを浮かべ部屋を出る。母はすでに就寝し、室内は静かだ。ガチャンと玄関のドアが閉まる音がした。 自分がケリをつける。 そう思っていたのに。 羽瑠にまんまとしてやられた自分が情けない。虚勢を張り部屋を出た羽瑠の指先が、微かに震えていたことを…私は見逃さなかった。 怖いくせに、無理しちゃって。 羽瑠はバカだよ。 …でも、お願い。 死なないで…。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

80人が本棚に入れています
本棚に追加