プロローグ

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   ルークは「塔」。  役割は、偵察。   *  夜天に翳した掌が輝く。  月光を吸ったかのように、仄白く。  まじないのようなものだった。  この光は月から授かったものーーいや、月でなくても良い。  月の出ない夜は星からでも、星さえ出なければ街灯からでも。  己自身から湧き出たものではないと、そう思い込めたなら、何でも良い。 ーーほんっと、弱いな。俺。  自嘲に震えた唇を、力ずくに吊り上げる。  春風と言うには冷涼に過ぎる風が、黒よりも茶に近い髪を揺らし。    利き手を腿の脇に振り落とすと同時に、四肢が真白く燃え上がった。  次の瞬間には、跳躍する。  目映い炎を棚引かせ。  5階建ての廃ビルの屋上。  手摺の外側ーー先程まで立っていた位置に、刹那、黒い影が雪崩れ込んだ。  蓄積した塵芥が舞い上がる。錆び付いた手摺が粉砕され、けたたましい衝撃音が鼓膜を揺さぶる。  身軽な獣と化した身体は、5メートルほど後方、屋上の中程に着地。  片手をついた姿勢のまま、煙る視界の先ーー赤褐色の残骸が飛び散る先へ、眼を凝らす。  漆黒の、蠢くもの。  月光に照らし出され、露わになったその姿にーー  彼は思う。  いつもながら、デタラメだ。
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