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「この前も言っただろう?僕は何も知らないんだ」
「そうか…」
「それじゃ敗者は潔く消えることにするよ」
「ああ…」
部屋を去ろうとしたソラは、一端立ち止まって俺にこう言った。
「最後に、握手をしてくれないか?」
「別に構わないが…なんでいきなり?」
「いや…なんとなくね」
ソラは俺に向けて手を差し出している。
俺は一瞬ためらったが、握手に応じることにした。
「ミズキ君……楽しかったよ」
「そいつは良かった。ま、俺は楽しくなかったけどな」
もちろん、楽しくなかったというのは本音だ。
命を賭けて戦いをしていたんだ。
神経をすり減らして、この身を削って、ようやく勝ち取った勝利なのだ。
楽しいわけがない。
「ミズキ君……生き残れよ」
「当たり前だろ」
そう言ってソラは手を離した。
寂しそうな表情を浮かべて。
「じゃあね、ミズキ君!」
そう言ってソラは出ていった。
俺だけが残された部屋は、どこか寂しかった。
(俺も、戻るか…)
この場の空気に耐えられなくなった俺は、しぶしぶ部屋に戻ることにした。
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