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樺殿の驚きをよそに、阿闍梨は竹簡を開いてみせた。
樺殿、目を見張る。
「何です?これは?」
「六朝頃の唐土で作られし予言書ですよ。これを夏火星の君に、是非ご覧頂こうと思いましてね」
「はあ」
「貸して差し上げます。写してお持ちになっているとよい」
「しかし、何故に竹簡なのです?」
「紙は風化しますからのう」
と、阿闍梨はよくわからない理由を述べると、その予言書とやらを、樺殿に差し出した。
樺殿は嫌な予感を覚えたが、拒むのもまた恐い気がして、つい手を出した。
ぽんと阿闍梨はその手の上に竹簡を置く。確かに手応えがあり、阿闍梨は生身であると知れた。
「これには読み方がありましての。ほれ、ここ。ここからこうして読み進めますので」
予言書らしく、普通に角から読むのではない。その読み方を指で追って教えて、樺殿が、
「へええ」
と感心したような声を出すと同時に、阿闍梨はいきなりふっと消えた。
「えっ?阿闍梨?嘘っ!」
焦る樺殿。
その手にはしっかり予言書が残されていた。
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