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東海の姫氏の国は百世に渡って王が国を治めていたが、やがて末世になって田が埋もれ、水涸れて、魚が空を飛び、鳥が人を喰らうようになる。天命は三公に移り、百王の世はついに終わり、卑しい者が力を得て、国じゅう戦乱となって滅ぶ。
そのような内容が書かれている。
それを憚りもなく、声に出して読んだ。
途中から腕を組んでそれを聞いていた花園殿は、しばし首を傾げていたが、
「それで?それのどこが予言書なのだ?」
と言った。
「唐土などではよくある話ではないか。前の王朝滅び、新しき国建つ時は、いつもそうだろう?」
「はあ。そうですね」
言われてみれば、その通りである。いったい何に驚くことがある。
樺殿は、ただ阿闍梨に会った異常さに仰天しているだけなのだと悟った。別に予言書の中身に驚いたわけではない。
「で、唐土の予言書と言ったな?間もなく、唐がそこに書かれているようにでもなるのか?それとも、渤海か?」
と、花園殿は言って、はたとそこで気がついた。
「待て」
予言書を覗き込む。
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