花園の羽林

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「それにしても、兄君。けい惑星とはどういう意味でしょうか?何なのでしょうか、私が夏火星とは」 「夏火星か」  それこそが、法真が樺殿に予言書を預けた意味ではあるまいか。花園殿はそう思った。  それからしばらく。桜の花の季節となった。  またこの邸に、沢山の人々が集う時節となった。  連日連夜、宴が催されている。  歌合にかり出されているうちに、樺殿はすっかり予言書のことを忘れてしまったらしい。しかし、花園殿は忘れることができなかった。絶えず頭のどこやらに、あの予言が残っている。  何日目かの管絃の宴の日のことであった。珍しく、客人の中に洞院中納言殿がいたのは──。  仙界かぶれのちょっと風変わりな公卿。しかし、それだけに、普通の人が読まないような、変わった漢籍に詳しかった。  花園殿は、この人ならばと思った。  だいぶ宴が進んで、皆が思い思いに勝手に飲み始めた頃、洞院殿が一人で池の水面の桜の影を見下ろしているのを目に留めて、花園殿はつつと傍らに寄って行った。
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