花園の羽林

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「さように漢籍にお詳しい洞院の殿。少しお教え頂けたらと思うのですが、宜しいでしょうか?」 「はて?私なんぞにお答えできることでしょうか?」 「勿論」  花園殿はそう言うと、一息ついてから一気に言った。 「唐土の書に、東海姫氏国とあるのはご存知でしょうか?東海姫氏国とは、日本(やまと)のことですか?」 「ほ?」  洞院殿は初耳らしい。興味を惹かれたらしい表情となった。 「東海姫氏国。恐らく、日本のことでしょう。唐土では、日本を姫氏の国と呼ぶことがあるようですから」 「姫氏とはどういうことですか?」 「日本は天照大神に始まる女系の国ゆえ、姫氏というのでしょう」 「姓ということはありませんか?」 「姓?姓といえば、周や呉は姫姓の王朝ですね。日本に姫姓はないでしょう」  洞院殿はそう言うと、ふと何か思いついたように頷いた。 「そうか。これはもしかすると、日本のことではないかもしれない。或いは、かつて日本に存在した小国かもしれません」 「かつて日本に?小国?」 「ええ。出雲ばかりではない、越の国も毛の国もありましたよ。陸奥なぞ、今でも蝦夷の国ではありませんか。なんでも、東国には、星を信仰する国があるとか」
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