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唐土では。いにしえより、火星の動きに注視してきた。
火星は戦乱を告げる星であり、また、飢饉や疫病を告げる星であった。火星は不吉なものだったのである。
また、時々、火星は人の姿になって地上にやってくることがあった。不吉を告げる星である。つまり、人となった火星は、不吉を予言し、人々を惑わすのである。
火星が現れた。それは戦乱が訪れ、帝王の座が危うくなることを意味する。その火星が樺殿であり、東海姫氏国が百代で滅ぶという予言書を手に入れた。
いや、縦目阿闍梨が樺殿を火星と称し、滅亡の予言書を押し付けて行ったのだ。
これはどういうことであるのか?
これを持っていれば、火星らしく、この国の行く末を人々に吹聴することができ、人々から予言者よと恐れられることができるということか。
いや、本当に火星ならば、樺殿本人にその自覚があるはずで、他人に指摘されるものではない。そして、自ら国の末を予言できるはずで、他人に予言してもらった物を持っているというのでは、まことの火星ではなかろう。
縦目阿闍梨の目的が、あまりに不気味である。
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