火星

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 彼は常に、夏火星と言われたことが引っかかっていた。また、予言の中身も気になる。  ところで、大陸と貿易している者は、陸奥の金を売り物にしていた。  そして、この金を求めてやってくるのは、何も唐土の人々ばかりではなかった。  関東に、二つの大きな内海があるが、その南の内海を拠点に、相模や房総を領する水軍があった。この水軍がここまで大きくなったのは、瀬戸内や九州の水軍と結んで、大陸と交易した成果にある。しかし、彼等は別に新たに陸奥とも結びたいとも考えていた。  その水軍の代表が陸奥を訪れた時、それが女人であると聞いた樺殿は、大変興味深く感じて、是非とも彼女に会いたいと思った。 「国府へ呼べ。いや、私が私的に建てた交易館の方に通すがよい」 と、樺殿は女を自宅に招いたのであった。
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