火星

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 女の商人である。それはそれは煌びやかに着飾り、念入りに化粧を施していた。  樺殿は迎え入れた交易館で、その姿に仰天した。こんな豪奢な身なりの女は、宮中にもいない。中宮も皇后も、この女に比べたら地味である。  かなり恰幅のよい彼女は、示された椅子にでっぷり座った。  女であるので、刀自と呼ばれている。  刀自は貴人は不慣れと見えて、ひどく恐縮していた。 「わらわが如き卑賤の者に、ご対面下さるとは……」 と、ぴかぴかの絹の衣を皺にして、その大きな体を小さく折っている。 「いやいや、おもととは是非会ってみたかった。異国との交易のやり方を伝授してもらいたくてな」 「異国との交易ですか?」 「そうだ。おもとの目的は陸奥の金であろう?それを都に売りさばくのか?それとも、唐土に売るのか?」 「……どちらもです。」  刀自はちんまりと、正直に言った。 「あははは」 と樺殿は笑って、 「まあそう固くならずに、楽にしなさい」 と、菓子を勧めた。 「金のことは私が許可する。その代わり、交易の手伝いをせよ。陸奥も唐土と取り引きしたいのだ」
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