火星

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 刀自がなずんでくると、樺殿はそう言った。 「陸奥の中にも異国と交易する者はおる。しかし、小規模だな。私は自らの手で、もっと大々的にやりたい。それが陸奥の国益ともなる。しかし、陸奥の地理的位置を考えればわかるであろう。陸奥は南方とは縁薄い。渤海が力ありし頃はよかった。だが、今の北方は不安定だ。東丹も女直もなかなか、交易の相手としては不十分だ。私は漢人と交易したい」  率直に望みを口にする樺殿に、刀自は少々がっかりしたような表情を浮かべた。 「なんとした?」 「実は、金の売買のお願いだけでなく、陸奥の交易のお手伝いもさせて頂きたいと思っておりました」 「ほう?」 「陸奥にては、北方との交易を強化するおつもりであるかと。北方の情勢危うしとは」 「ほ!」  そこで、樺殿は声を出して笑いだした。 「なんとも欲深い。瀬戸内や九州と手を組み、唐人と交易するだけでは足りず、陸奥とも手を組み、渤海人とも交易する魂胆かよ!あははははは」 「はあ。恐れ入りました」  己の魂胆を見抜かれて、少々頬を赤らめる刀自であった。 「ほ!商人は厚顔と聞くが、恥じらいもあるのよな。気に入ったわ」
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