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樺殿はすっかり刀自を気に入って、刀自の滞在中は、ほぼ毎日、この交易館に招いて、様々な話を聞き出していた。
樺殿はその間、刀自に交易の手伝いをすることを約束させている。また、あまり利益は見込めないが、大陸の北方との交易も、協力して、共に行うことも約束した。陸奥は主に黄金を。刀自は売りたい物を売る。中には唐土で仕入れた物を、今度は陸奥に、さらに北方に売るつもりらしい。
さて。刀自は異国のことにも様々な情報を持っていたが、日本国内の地方の珍しい伝承にも大変詳しかった。
ある日、話の弾んだついでに、樺殿はふと、東海姫氏国について聞いてみたくなった。
「東海姫氏国ですか?」
刀自は意外にも、よく知っているという顔をした。
「東海姫氏国。それは確かに、かつてございました。今、末裔が瀬戸内や筑紫の水軍におります」
「なんだって?!」
「彼等はかつて、唐土の皇帝に謁見し、自ら周の末裔・姫氏であると名乗ったのです。入れ墨、素潜りは、太伯、虞仲の末裔の証。故に、唐土では今でも、日本を周の末裔と信じております。しかし、日本は天照大神の国」
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