第1章

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別に部活は何もする予定はなかった。 ただ、昔から昆虫やその生体に興味のある僕からしたらその部活は非常に魅力的で仕方がない。 顧問も放置状態、部員の先輩も幽霊状態で実質1人。 でも、歴代の先輩が残してくれた蝶やカブトムシ、クワガタ等の標本や生体の資料を独り占めできるのは有り難い。 そんなことを思いながら、一番端の窓側の席で空をぼんやりと眺めたり、教室を見渡してみたり。 誰も僕の方へは視線を向けない。 まるで、いない存在のようだ。 「な、あいつの名前なんだっけ?」 「あいつ?誰だよそれ」 「ほら、一番はじっこの窓側の席の奴。あいつのとなりの席の奴って見たことあるか?」 「そういえば学校来てないよな」 一瞬、自分の話題かと思った。 しかし話題はすぐにとなりの空席に変わった。 まだ一度も学校に来てないクラスメートさえ話題にあがる。 僕は名前さえ覚えてもらえていない。 その差に少し傷ついたが、チャイムが鳴るとその話題さえ消えていった。
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