第1章

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「ママ? 毅とご飯食べてから帰るから、 準備しなくていいよ? 遅くならなように帰るから。」 帰ってから… 遅かったわねとか、 いらないんなら電話ぐらいって、 絶対に言うんだから。 遅くなったときには。 でも、ママの声、なんかちょっと違ったな… 毅が居なくなっちゃって、 ママも寂しいのかしら。 息子が出来たみたいだって、 ママもちょっと嬉しそうだったから。 「どうした?」 「ママも毅が居なくなっちゃって寂しいみたい。 声が沈んでた。」 嬉しそうに笑う。 そんな顔も少年のようで、好き。 「麻美が好きそうな物は作れないよ? 見切り品のキャベツとピーマン買ったから、 野菜炒めにしようかって思ったんだ。」 なんでもいいもん。 毅が作ってくれるものなら。 … 「早く終わった日は、 店に寄っていい? すぐに帰るから。」 やっぱり何日も会えないってイヤ。 少しだけでも顔を見たいの。 だって、 まだ無理しちゃダメなんだから… 帰りの車の中で訴える。 店に寄っても、暗くなるまでには着くように帰るから… 「しょうがないな… ちょっとだけだよ?」 部屋に帰ったときには嬉しかったんだけど… やっぱり寂しいな。 同じ家に居たのに、 離れて暮らしちゃうって。 前のように家の前で車を降りる。 じゃあね… おやすみ。 と手を振る。 帰って行く車を見送ってると、 凄く寂しい感情が沸き上がる。 もしかしたら…このまま… なんて、 そんな訳ないのに。 あながちその予感が間違っていないことに気付くのは… 数日経ってからのことになるのだけど。
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