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「ゴガァー!!」
まさか、熊と出会うとはな。
「……パパ。」
「大丈夫だ。」
月に1度の息子と会える日に、熊と出会うとはな。この状況から生きて下山出来たら、きっとアイツに大目玉くらうだろうな。
「怖いよ。」
「大丈夫だ。」
一体何が大丈夫なんだ?奇跡的に熊は、俺達を睨み付けてるだけで襲って来ないが、この距離にして5メートルぐらいのどこが大丈夫なんだ?
「食べられちゃう?」
「そんな訳ないだろ。母さんにその花を持って帰るんだろ?」
息子が喜ぶ母親の笑顔を想像して花畑で摘んだ花は、恐怖で強く握り絞められた手で、既に萎れていた。
「ゴガァー!」
「パパ……。」
「大丈夫だ。いいか?ゆっくりだ。ゆっくり、熊から目を離さずに後ろに歩くんだ。出来るな?」
「うん。」
「よし、いい子だ。」
助かる。俺達は、絶対に助かる。こんな所で熊に食い殺される訳がない。そんな事は有り得ない。有っちゃならないんだ。俺は、無事に息子を連れ帰る。きっと数年後には、この出来事も笑い話になっている。少し後ろに山小屋がある。きっとそこに何か武器になる物があ
「ゴガァー!」
「え?」
熊は、息子の頭にかぶり付いた。
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