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今日はなんだか気分が優れない。 人の色を避けるために乗らなかった電車を利用したからか。 それとも久しぶりに、日が登る前に起きたからか。 はたまた、今日が、両親の命日だからだろうか。 「……全部か」 俺の独り言は、ただの白い息となって。 登り始めた日に、霞んだ。 一年振りの電車。 一年振りの色とりどりの花束。 一年振りの墓参り。 いくら5回目の訪れだからと言って、冬のここの空気はどうしても慣れない。 どうしても、心に鉛が落ちてくる『音』が視えてしてしまう。 「………けん?」 数十分前、ここに到着した時に少し感じた色。 「……久しぶり、けん」 「…ああ、久しぶり。陸」 俺と、同類のやつ。
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