5人が本棚に入れています
本棚に追加
インセクトピアの王国周辺は、時折魔物が出没することがあり、王国の住民たちは魔物との戦いに慣れていた。
若き王子テオとその親友チオも例外ではなく、テンテン王の元で基本的な戦闘訓練を積んでいた。
テオは王子としての地位に縛られることなく、自由に育てられてきた。
彼は父親であるテンテン王の導きの下、王国の民と同じように日常生活を送り、戦いの技術も身につけていた。その日、テオとチオは広場を出発し、森の奥深くにあると噂される隠れた泉を目指していた。
出発してすぐ、森の入り口で最初の魔物に遭遇した。それは硬い甲殻を持つダンゴムシのような魔物で、森の中を這い回っていた。
「チオ、ダンゴーレムだ!準備はいいか?」
テオは剣を手にしながら、隣に立つチオに声をかけた。
「もちろんさ、テオ!こんなの、いつもと変わらないよね。」
チオは自信満々に言い、彼の強力な顎を鳴らしながら魔物に向かっていった。
二人は息の合った動きで魔物に立ち向かい、すぐダンゴムシのような魔物を倒した。
チオはその顎で防御を固めた敵の鎧を砕き、そこにテオの渾身の剣戟を見舞った。
「やっぱり、僕たちっていいコンビだね!」
チオが笑顔で言った。
「うん、でも今日は魔物がいつもより多い気がする。気をつけて進もう。」
テオは周りの気配を探りながら、少し慎重に言った。
「確かに…。でも、僕たちなら大丈夫さ!」
チオはあくまで前向きな態度を崩さず、テオと共に歩を進めた。
森の中に入ると、道は次第に狭くなり、木々が生い茂る中を進むのが難しくなってきた。
すると、再び魔物の気配を感じた。
今度は小さなハエのような魔物が群れを成して襲いかかってきた。
「チオ、上から来るぞ!」
テオは咄嗟に叫び、剣を振り上げて飛んできた魔物を打ち落とした。
「任せて!まとめて片付けてやる!」
チオは素早く反応し、鋭い顎で次々と飛び交う魔物たちを仕留めていった。
二人は息を切らしながらも、またたく間にその魔物たちを倒し終えた。
「こんなにたくさん出てくるなんて、ちょっと変だね。」
チオが息を整えながら言った。
「うん…。普段はこんなに多くはないはずだけど…。」
テオも疑問を感じつつ、前方を見つめた。
だが、彼は気を取り直し、仲間を安心させるように微笑んだ。
「でも、ここまで来たら泉はすぐ近くだ。もう少しだけ頑張ろう。」
テオは前向きに進もうと決意し、二人は再び歩き出した。
進むにつれて、森はさらに深くなり、周りの木々が高くそびえ立つようになった。
光はますます少なくなり、道は次第に不気味な静けさに包まれていった。
とはいえ、テオとチオは訓練の成果もあり、恐れることなく着実に歩みを進めた。
そしてついに、彼らは森の中でほのかに光る場所にたどり着いた。
木々が途切れ、小さな開けた場所が目の前に広がっていた。そこには、澄んだ水をたたえた美しい泉があり、その周りには青く輝く花々が咲き乱れていた。
「ここが…隠れた泉だ。」
テオはその美しさに息を呑んだ。
「見てよ、テオ!あの花だ!すごくきれいだね!持ち帰ってみんなに見せようよ!」
チオは興奮しながら、特に目を引く大きな花に駆け寄った。テオはその花を見つめた。
とても美しいが、何か不吉な予感を感じずにはいられなかった。
「チオ、待って。何か変な感じがするんだ。」
テオは慎重に言ったが、チオはすでにその花を引き抜いていた。
その瞬間、周囲の空気が一変した。
森全体が静まり返り、冷たい風が吹き始めた。花の根元から立ち上る黒い霧が、まるで彼らの恐怖を煽るように広がっていった。
「何か…変だ。」
テオは辺りを見回し、胸の中に不安が広がっていくのを感じた。
最初のコメントを投稿しよう!