第3章 鳥の国

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アナゼリアとの謁見を終えたテオたちは、ワオン・フーフーの封印された都市の最深部へ向かうのは翌日に決まり、今日は一息つくためにエアリアの街を自由に見て回ることとなった。 「とりあえず、今日は休んでいいってさ。こういう時くらい、少しは羽を伸ばしてもバチは当たらないでしょ?」 ミエラが軽く肩を叩きながらテオに声をかけた。 「うん。今日はこの美しい街を楽しもう。」 テオも微笑みを返し、少しほっとした表情を見せた。 空に浮かぶエアリアの街は、澄んだ空気と美しい風景に包まれていた。街中には色とりどりの花々が咲き乱れ、鳥族たちが楽しげに空を舞っている。テオたちはそんなエアリアの平和な光景に癒されながら、街を歩き回った。 「見て、あの建物!すごく古いけど、とても素敵ね。」 テンシルは歴史的な建造物に興味津々で、いくつも写真を撮っていた。彼女の目はキラキラと輝き、学者らしい好奇心を見せていた。 「エアリアって、ただ浮かんでいるだけじゃなくて、歴史や文化もたくさん詰まってるんだね。テンシル、楽しい?」 テオが彼女に声をかけると、テンシルは照れくさそうに頷いた。 「うん、すごく楽しい。エアリアに来られるなんて、夢みたいだもの。明日から大変そうだけども、今だけはこの時間を大切にしたいな。」 一方、人犬は屋台で焼き鳥を頬張りながら、楽しそうに街を見渡していた。「おいおい、ここの料理、めちゃくちゃ美味いじゃねえか!風に当たりながら食べると格別だぜ。」 「また食べてるの?でも、確かにこの焼き鳥は美味しそうだね。」 チオが人犬の食べ物をじっと見つめ、彼の食欲に影響されて自分も少し食べてみた。「わあ、本当に美味しいね!」 「な、だろ?こんな美味いもんを食わずにいられるかっての。」 人犬は満足げに笑い、また新しい串を注文した。 その頃、ミエラは広場の噴水の前で、街の子供たちに囲まれていた。彼女の持つ槍術に興味を示した子供たちが、色々と質問をしていたのだ。 「槍ってどうやって振り回すの?難しいの?」 「お姉ちゃん、もっと見せて見せて!」 ミエラは最初は戸惑っていたが、子供たちの純粋な好奇心に心を動かされ、笑顔で簡単な技を見せていた。 「いい?こうやって力をうまく使って振るんだよ。ほら、こんな感じで…」 ミエラの動きに感心する子供たちを見て、彼女も自然と笑顔を浮かべた。 「お姉ちゃん、すごい!」と歓声が上がり、ミエラは少し照れながらも誇らしげだった。 一方で、テオは仲間たちの笑顔を見て、心の中で明日への決意を固めていた。この平和な光景を守るため、明日の試練を絶対に成功させることを誓ったのだ。 「みんな、ありがとう。僕たちは絶対にエアリアを守るんだ。」 テオは仲間たちの姿を見つめながら、静かにそう心に決めた。 この一日は、彼らにとって束の間の休息であり、同時に新たな力を得る時間でもあった。エアリアの美しい風景と仲間たちとの交流が、テオたちの絆をさらに強めた。明日からの試練に向けて、彼らの心はしっかりと繋がっていた。
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