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「にゃんこ!まま、にゃんこ」
幼子の甲高い声が突如響く。小さな足音がすぐ近くにまで迫ってきていた。
足音が止まると同時に無垢なる笑みを浮かべた幼児の姿が水面に写る。小さな手が猫に伸びてきた。
(な?)
体を撫でられると身を固くした猫に対して、幼児は尻尾を掴んだ。
「にゃんこ!」
「!? つ、掴むな!」
思わず大声が出る。幼子は目を大きく開け、驚きのためか泣き始めた。後ろについてきた若い女も周りの人間も皆、時が止まっている。
「猫が・・・・・・しゃべった」
誰かの呟きと共に叫び声が広がった。四角い機械で動画を撮ろうとするもの、猫を捕まえようとするもの、恐れ気味悪がるもの・・・・・・
猫は見の危険を感じたのか身を翻し、一目散に生け垣へと飛び込む。
「あっちいったぞ!」
「チッ!どこだよ」
猫は身を固くして生け垣の片隅に踞った。
しかし一つ足音が近づく。
(やり過ごさねば・・・・・・)
猫は息を潜めた。
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