第1章

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18/死神たち 1  紫ノ上島 西の森の中。午後13時31分  ユージは黒いフードのついた全身黒ずくめの服でしゃがんでいた。女性が丸々入りそうな巨大なバッグを足元に置くと中から大量の銃火器を取り出す。  バレットM106・50口径、HK M417・グレネードランチャー装着モデル、ベクターTDI40口径、ストリートスイーパーショットガン12ゲージ、バトルナイフ、これにDEとこれら全ての弾に拘束具や医薬品、他モロモロがバッグの中に押し込まれていた。総量は40キロを超えるだろう。  ユージはタクティカルベストにそれぞれのマガジンや銃を体に装着させながら右手にある腕時計のようなものを見た。タイムリミットを示すストップウォッチで残り57分。ユージがこの島に滞在できる時間だ。この腕輪はJOLJU特製のテレポートマシンで時間になれば強制的にテレポートが実行されることになっている。  ……始まっているな……   波止場方面から絶え間なく銃声が聞こえ、ヘリが上空を旋回している。 ユージは表に出られない。だから待つしかない。不幸な<死神>がこの森に足を踏み入れるのを……  全ての装備を身につけ終わると、最後に死神の仮面に似せて作った仮面を被った。その時、遠くから<アベ・マリア>冒頭部分を独唱する大きな歌声が聞こえた。  紫ノ上島 波止場。 「涼ちゃん!! 伏せろっ!!」 「はいっ!」  拓は上空から銃撃してくるヘリに向けオートライフルを構えると、スコープを覗く事無く応戦した。上空から放たれたライフル弾は波止場全体に散らばり着弾する。双方とも、狙って当たる距離ではないしヘリは移動しながら撃っている、お互い牽制しているだけだ。それでもまぐれ当たりがないわけではない。涼は当初の予定通り土嚢から出ると波止場東にある倉庫傍に作ったの第二の防御陣地に飛び込んだ。ここならば海側を監視しつつ住宅地の方面、上空にも対応できる。  涼は防御陣地に飛び込むとまず海側を見た。その時、数人が海に飛び込むのが見えた。どうやら泳いでこっちに向かっているようだ。すぐに拓に報告する。 「そうか」 400mちょっとなら泳いで来られない距離ではない。だが波の流れがあり島の近くはサンゴがある。そして装備もある。泳いでいる時に攻撃はできないから差し迫った問題ではない。
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