別物

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近くの派出所から巡査員がやってきて、 やや薄暗くなった路地裏に懐中電灯を当てた。 「また、おまえらか?!」 どうやら不良のなかに前科持ちがいるみたい。 警官の登場で、 不良たちは一目散に走り出した。 「コラッ!待たんか!!」 追いかける警官、逃げる男、 その編み込みロン毛が 一瞬 私を見た。 「!」 ううん、メチャクチャ睨まれた。 「……………こわ…」 「舞ちゃん、このひと、中村くんだよね?」 携帯を仕舞いながら近付いた野乃ちゃんは、 傷だらけのヒーローにすぐ気付いた。 「……ってぇ、 何で俺の名前知ってる?」 「……………」 お腹を抱えながら立ち上がった中村くんは、 動かなくなったクラスメートをゆっくり引っぱり起こす。 「立てる?」 「ちきしょー、誰だよ、あいつら…」 ……良かった、生きてる。 「君たち、救急車呼ばなくて大丈夫かい?!」 不良一人を捕まえて、戻ってきた警官が 救急車を呼んで 中村くんたちは、乗って行ってしまった。 「もう、いいよ。ありがとうね」 通りすがり、 通報しただけと分かった私と野乃ちゃんは、すぐに帰らされ、 何事もなかったよう に電車に乗って帰宅。 今日は違う意味でドキドキした日だった。
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