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いつもの通学電車。
いつものように、中村くんが乗車してくると
いつもより、
心臓がうるさくなった。
昨日、別に距離が縮まった訳じゃない。
ただ話しかけるキッカケが出来たこと
____ただ、
それだけ………。
「傷だらけの王子に話しかけなよ」
野乃ちゃんが、私を小さく、冷やかす。
その王子の痛々しい姿に、
周りの女子高生たちは注目度をアップさせている。
『よ、よし…』
私は
ギュウギュウに近い車内を、"スミマセン"と
呟きながらかき分け、
「おはよー、怪我、大丈夫?」
やっと、中村くんのそばに近付くことができた。
いつもは
遠くから見ているだけだったのに。
「大丈夫でもない。
昨日、警官、呼んでくれて助かった…」
座席の前の手すりに掴まり、
電車の揺れに器用に身を任せる彼は、
私の足を見た。
「な、なに?」
「足、捻挫か何かしたの?」
「………うん…」
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