別物

12/17
前へ
/17ページ
次へ
いつもの通学電車。 いつものように、中村くんが乗車してくると いつもより、 心臓がうるさくなった。 昨日、別に距離が縮まった訳じゃない。 ただ話しかけるキッカケが出来たこと ____ただ、 それだけ………。 「傷だらけの王子に話しかけなよ」 野乃ちゃんが、私を小さく、冷やかす。 その王子の痛々しい姿に、 周りの女子高生たちは注目度をアップさせている。 『よ、よし…』 私は ギュウギュウに近い車内を、"スミマセン"と 呟きながらかき分け、 「おはよー、怪我、大丈夫?」 やっと、中村くんのそばに近付くことができた。 いつもは 遠くから見ているだけだったのに。 「大丈夫でもない。 昨日、警官、呼んでくれて助かった…」 座席の前の手すりに掴まり、 電車の揺れに器用に身を任せる彼は、 私の足を見た。 「な、なに?」 「足、捻挫か何かしたの?」 「………うん…」
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

144人が本棚に入れています
本棚に追加