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スケッチをしていた手を止め、
私たちの方を振り返った中村くんは
小さく会釈みたいなのをすると
再び、
鉛筆を握る手を動かし始めた。
「……………」
軽くシカト?
「集中してるみたいだ、
あいつ 絵、描くときは別人みたいになるから」
「みたいだね…」
………………桜を描いてるのかな?
日本人は桜が好きだもんね、
ハーフみたいな顔した中村くんも"和"が好きなのかな?
私は、こちらまで案内してくれた少年が去ってしまっても、
そこから動かなかった。
今にも散りそうな桜を、ひたすらキャンパスに写し出す中村くんの背中を見て、
ずっと、
見ていたいと思ってしまっていた。
気付くと
夕方7時になっていた。
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