複数愛

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「舞ちゃん、おはよう!」 光くんの元気のいい声で起こされる。 目を開けて、飛び起きた。 「おはっ………、オっはー!」 「………オっはーって」 やばい、 昨日、 勝手に光くんにキスをした罪悪感が私を思い切り動揺させている。 「古くてびっくりした!慎吾ママンって確かにいたよな。」 「………うん、そう」 良かった。 気付かれていないようだ。 ………もっとすればよかった。違うか。 「布団、押し入れに?」 昨夜は、 四畳半の部屋にコッソリ移動して、しばらく眠れなかったから、 やたら眠い。 「うん、あげといて」 光くんはすでに制服を着ていて トーストを焼いてくれている。 「美咲さんは?」 「もう出たよ。今日は小さめの絵画の追加だけだから母さん一人で大丈夫みたい。 目玉焼き、乗せる?」 「パンに?じゃ乗せる」 初めての食べ方にワクワク。 「……あの、大きな絵とか、 賞穫った、"光"は展示会には出品しないの?」 焼きあがるまで 私は、ドリップ式のコーヒーの準備をする。 「うん、父さんが残した売り物用の絵画に比べたら有名すぎるし、 あれに高値がついてもトラブルが発生するだけだから 。」 「……そ うか……」 いくら有名な画家でも 亡くなって作品が尽きてしまったら 残された家族は生活の糧が無くなってしまう。 「晃大さんは、亡くなった先まで家族を思ってたんだね。」
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